臍ヘルニア(いわゆる “出べそ” について)
分かりやすい臍ヘルニアの写真を掲載しています。
一般的に“出べそ”と言われている疾患は、生後1-2週間(臍帯の脱落後)に発症し、臍部が突出した状態をいいます。
診断
明らかに大きな臍の場合の診断は容易です。横から見て臍周囲の皮膚よりも臍の中心が突出している場合は‘臍ヘルニア’の可能性があります。臍の中心をお腹の中の方向に向けて指で押して見て、穴が開いていれば‘臍ヘルニア’の診断がつきます。
病態
左右の腹直筋筋膜の正中での閉鎖不全の状態です。この離開した穴から腹圧により腹腔内容(腸管)が外に向かって突出した状態です。
自然経過
臍脱落が起こった頃から突出は徐々に大きくなり、生後2−5ヶ月で最大になります。放置していれば1才までにはほぼ90%は自然に治癒(筋膜が閉鎖する)します。
問題点
自然治癒が多いため、以前(15年ぐらい前まで)は放置されていました。しかし放置するとヘルニアで延ばされた臍部の皮膚は穴が閉じても十分に縮む事が少なく、醜形をのこした形での治癒が多くなります。また、10%程度は治癒しないまま、いわゆる“出べそ”として残ります。
臍ヘルニアの治療法
出来る限り、醜形を残さないように、皮膚が延びるまでに治療を開始する事が重要です。そのために、出来るだけ早期から絆創膏固定により、腹直筋筋膜の閉鎖を促がすことが肝心です。絆創膏固定の開始時期は早ければ早いほど早期に治癒する傾向があります。
絆創膏固定のやり方
絆創膏固定のやり方は重要です。原則は ①脱出腸管を腹腔内に押し込んで、しっかりと左右の腹直筋膜を寄せる ②出来るだけ長時間固定する ③皮膚の絆創膏かぶれを防ぐ、です。
それらを加味した①固定法の習得 ②使用する絆創膏の選択 ③1日1回の入浴指導、などは重要です。
‘臍ヘルニア’が残存した場合の対応
手術は2才を過ぎて行う事となりますが、主は形成的な問題ですので、家族と良く相談をした上での対応となります。 手術法としては、臍内に切開を入れて修復を行いますので、残存臍ヘルニアが小さい場合は、ほとんど手術創は分からない程度にきれいになります。
‘臍ヘルニア’は治ったが(筋膜は閉鎖)、皮膚のあまりが大きく臍が醜い形で残る場合があります。この場合も手術修復は可能ですが、‘臍ヘルニア’より難易性の高い手術となります。
年長児の臍異状について
臍ヘルニアが小さい場合、日常生活には支障を来さない事も有り、小学校入学前まで放置されている事があります。この場合、家族が臍ヘルニアに気付いて放置している場合と全く気付いていない場合があります。“出べそ”は基本的には放置しても命にかかわる事はありませんが、こどもが集団生活をおくるようになった時、からかわれることの無いように、 “出べそ”がある場合は、なんらかの対処をした方が良いと思います。
※臍ヘルニアを疑った場合は早めに専門医を受診して下さい。出来れば生後2週間目ぐらいが良いと思います。年長児でも、臍の形が気になる方は一度専門医の受診をお勧めします。
“出べそ”をきれいに治すためには、大きくならないうちに、生後早期からの治療をお勧めします。
種々の臍ヘルニアです。一番下のものが、大きな臍ヘルニアが治っても余った皮膚がある状態の臍です。