11)その他、便秘症、夜尿症、熱傷など
小児便秘症について
便秘と便秘症は違います
一般的には1日1回排便がなければ、心配される方もおられますが、便秘による症状がなければ1週間に1回の排便でも心配ありません。これらは単なる便秘であり、便秘症ではなく治療の必要もありません。便秘による症状は、排便困難、排便時出血、排便時痛、便もれ、又は便が出ないための食欲不振、腹満、嘔吐などです。このような症状がある場合は ‘自分の体質だから仕方が無い’ と諦めることなく、外来を受診して下さい。早めの対応をすれば快適になる事が多いものです。一般的には1週間に2回以下の排便の場合は、少し注意を要します。
小児の便秘症にかかりやすい時期は
① 離乳食の開始時期
② 幼児のトイレトレーニングの時期
③ 学童の通学の開始および学校での排便回避 などです。
慢性的に便秘症が持続する場合は、手術を要する外科的疾患(ヒルシュスプルング氏病・直腸肛門形態異状など)を除外する必要があります。
治療の目的は
① 苦痛を伴わない排便が週に3回以上ある事
② 遺糞(便もれ)など便秘症に伴う症状がない事
③ 便秘症による日常生活に支障を来さない事 です。
治療法は便秘によって生じた症状を早期に解決する急性期療法とずっと快適な生活が送れるように維持する慢性期療法があります。
急性期療法には
① 指による便排出
② 浣腸
③ 下剤 などが含まれます。
慢性期維持療法は
① 生活(排便)習慣の改善
② 食事療法(食事指導)
③ 薬物療法 などです。
治療法も年齢によって異なりますので、もしお困りのようならはやめに一度外来を受診される事をお薦めします。
夜尿症について
「おねしょ」と『夜尿症』は別けて考えています。
1 「おねしょ」と『夜尿症』の違い
「おねしょ」はありふれたこどもの症状です。夜寝ている間につくられる尿量と尿を溜める膀胱の大きさのバランスがうまく取れていないときに起こります。また、膀胱に尿が溜まっても、睡眠が深くその刺激でも目覚めない時にも起こります。こどもの成長とともに、膀胱容量が大きくなったり、膀胱の尿貯留の刺激を感じる様になれば自然に「おねしょ」は無くなります。そのため、5歳未満のこどもでは「おねしょ」があっても必ずしも病気とはいえません。5歳を過ぎて月に数回以上「おねしょ」があるこどもは5人に1人ぐらいです(20%)。10歳(5年生)でも20人に1人ぐらい見られます(5%)。一般的に、小学校へ入学後も「おねしょ」が続く場合は、『夜尿症』として治療が行われます。『夜尿症』の治療に当たって最も重要な事は、«尿漏れ»が夜間だけのものなのか、昼間も起こる(遺尿症)のかをしっかりと識別する必要があります。昼間も«尿漏れ»がある場合の多くは、小児泌尿器科的疾患(水腎症・尿管膀胱異状など)の精査を必要とします。治療方針・治療法が異なるからです。
2 『夜尿症』の治療
『夜尿症』治療の原則は 《起こさず・焦らず・怒らず・褒める・
比べない》 です。治療法には ①生活指導 ②行動療法
③薬物療法があります。先ず最初は、排尿手帳を付け、
その症状・病態を把握します。その後、食事・飲水・
排尿などの生活指導を行いますが、概略5人に一人はこれで治癒します。
これで治癒しない場合はアラーム療法、薬物療法などに移行します。
こども本人はそれなりの精神的負担を感じていますが、
早期の治癒を諦めている場合も少なくありません。
『夜尿症』の治療には、本人の‘治そう’という意欲と保護者の協力が非常に重要です。
是非、家族で取り組まれる事をお薦めします。
小児のやけど(熱傷)について
日本における小児のやけど(熱傷)は軽度なものが多く、適切な治療をすればケロイドなどを形成することが少なく治癒します。
この理由としては、外国に比し、大きな交通事故や戦禍に巻き込まれることがすくない事が考えられます。ほとんどは家庭内のもので、ポットの湯がかかったり、風呂の湯が熱すぎたり、ストーブに触れたりするものです。
初期対応
先ず、冷やすことがポイントです。
やけどを起こした場合、放置すると局所の熱が周囲に拡がり、やけどの重症度が高くなります。そのため出来るだけ損傷を拡がさないように充分に冷やして下さい。範囲が比較的小さい場合は洗面器に氷水をつくり20−30分ぐらいを目安に局所を冷やして下さい。
この場合は冷えすぎないように大人が我慢が出来る範囲で一緒に局所(手や足)を持って氷水につけると凍傷が防げます。
氷枕(アイスノン)があれが、これをタオルに巻いて局所を冷やすのも効果的です。小さなこどもは冷えすぎて低体温にならないように注意して下さい。
初期対応後の対応
体表面積の10%以上のやけどは要注意です。創面からの体液の喪失が多くなるため、輸液が必要となりますので、必ず早めに受診して下さい。
体表面積の目安は片腕(肩から手の先)または片足が10%、体幹(腹部全体)が20%、体幹(背部全体)が20%、顔面・頭部が20%です。
やけどの治療
以前は抗生剤投与および抗生剤塗布ガーゼは主流でしたが、最近は創傷治癒を促進する事を目的に出来るだけ消毒を控え局所洗浄・創部被覆が治療の方針になっています。
我々のクリニックも、出来るだけ抗生剤・消毒液を使用しないで創傷治癒を促す方向で加療をしています。